傾斜は容赦なく増し、核心の近づきを予兆させるかのようであった。
左側の突起が2峰で、さらにその奥(右側)が白馬岳山頂。そして、いよいよココから主稜の核心がはじまる。
核心に備えて、風をしのげる場所で小休止!
反対側から、姐さん撮影^^。
写真が2峰の取り付き。岩と雪面の間はシュルンドとなって口を開いているため、左端まで回り込む。傾斜が増すうえ、岩が露出しはじめピッケルのシャフトが入らないため、不安があればロープを出したい場所だ。我々はロープを出さずに慎重に通過。
2峰をほとんど登りきった場所から振り返る。あまりに急で、後続のメンバーが見えない。こうやってみると、結構、大雪渓側(右側)にも雪庇が発達している。視界不良時は要注意だ。
雪面にバケツを掘り、アンカー(メインとなる支点)をスノーバーで確保する。
そしていよいよ、山頂へ向けてアタック開始!写真は、ロープを結び、折角持ってきたからとダブルアックス(両手にピッケルを持つ)を持つワタシ。
写真はトップを行くワタシ。
見上げると、張り出した雪庇が覆いかぶさる。崩落してこないことを、ただ祈る。
30mくらい登ったところで、下から声が。「おーい、ちょっとロープが足りなそうだ~」って。おいおい、マジですか??スノーバーで頼りないセルフを取る。そして、下では別の50mロープを接続している様子。
ココから雪庇を見上げる。
そして雪庇直下まで登り、トラバースに入る。が!せり出した雪の塊に体が押し出され、ほぼ垂直の壁状態、汗。足下には数百mの空間が広がり、いつ抜けるともわからぬスタンス、20mほどのランナウトに怯えながらも、落ち着いて一歩一歩進む。
そして急な雪壁を乗り越えると、急に眼前に、まばゆい光が溢れる巨大な空間が広がった!白馬岳山頂(2,932m)だ!!やった~。振り返って、2峰を見下ろす。
下から見上げたときは「大した長さはないかなぁ」と思ったが、実際は取り付きの岩から60m以上あったようだ、汗。「50mロープでOK」というのは、ガセネタだったみたいだ、汗。後で聞くと、2ピッチに切るのがフツーのようだ。
雪庇を避け5mほど内側へ進み、ピッケル2本とスノーバー1本でアンカーを設置し、メインロープを固定。合図をして、セカンド以降が登ってくる。写真で見ると傾斜はそれほどでもないように見えるが、セカンドがいる右側は雪庇本体で、直下は絶壁となっている。
写真は、主稜の全景。
セカンドのsasaki氏がピックを雪面にきめ、一気によじ登る。お疲れ様でした!!
サードの姐さんも登りきり、そしてラストのsato氏をスタンディングアックスビレイで確保。そして、4名みな、無事に白馬主稜の登攀に大成功!会では以前、ことごとく敗退してきたルートのようで、好コンディションに恵まれた我々は、ほんとに幸運だったと思う!
しばし休憩を取り、ギアを片付けてから小屋へ向かって下りはじめる。そこはもう、天国のよう^^。
そして、登頂を祝して乾杯!!そりゃ、旨くない訳がないんな~。
登っている途中に困難にさしかかったとき、「山頂でビールを飲むぞ!」と自分を励ましていた、汗。いやいや、困ったときは仕事でも遊びでも、まずは身近なつまらない目標を立てると良いらしい^^;。
前にも書いたが、20年に渡る「長い夢」であった白馬主稜。目標どおり(1)好天のもと、(2)自分たちの力で、(3)猿倉からの日帰りで、(4)オールトップで行かせていただけた!ということで、自分にも乾杯!してもいいでしょ^^;。
かなりゆっくり休憩を取る。大雪渓からは、スキーやボードを担いだ人たちも多く上がってくる。左側が杓子岳、真ん中が白馬鑓ヶ岳。かっちょいー。
展望、天候も良く1時間以上休憩し、13:50に下降開始。雪渓上部は適度に締まり、快適に下れる。
杓子岳よ、また来る日まで。
後半は雪がぐさぐさに腐り、ヒザまでの深いラッセル!?疲れた体には堪えるが、ええい、あとは下るまでよ!そして白馬尻を15:10に通過。登ってきた主稜を振り返る。素晴らしき1日を、ありがとう!
そして、猿倉に16:00着!行動時間12時間の大冒険となったが、好天、トレース、適度な積雪量と足並み揃ったメンバーにより、予想よりもかなり早く下山でき、明るいうちに自宅に帰ることができた。
20年来の夢であった白馬岳・主稜。楽しく無事に登ることができて、あらゆるものに大感謝である。
一緒に歩んだメンバー、心配してくれたあなた、応援してくださった皆様。ありがとうございました!
参考装備 (4人パーティ)
ツェルト(簡易テント) 4、スコップ 2、ゾンデ 2、雪崩ビーコン4、バーナー&鍋 2セット、
スノーバー 3本、9mm×50mロープ 2本、ギアは適宜 など