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by kanechin
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遥かなる錫杖 (左方カンテ)

 北鎌を無事に終え、余韻に浸る間もなく再びハンドルを握る。安房トンネルを越え、平湯を抜ける。途中、酒屋でお酒と肴(コンビニがないので、これが夕食となる)を仕入れ、新穂高温泉口の無料駐車場へ。

 無料で入れるアルピニスト御用達の「新穂高の湯」へ、ヘッドランプとビー○を片手に向かう。灯りの無い橋下の露天風呂は混浴(水着着用OK)!?結構、カップルや家族連れで入りに来る人たちも多くてオドロイた。ゆったりストレッチしながら、師匠と思い出話に花を咲かせる。温泉にはマット(お湯)付きボルダーあり!?

 汗と疲れを流し、駐車場にテントと居酒屋を設営!改めて、北鎌の無事と錫杖に向けてカンパ~イ!!
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 ビールに芋焼酎、チーカマに焼き鳥(ホ○イの缶詰をランタンで温める)にトマトジュース!?やっぱ、野菜を摂らなきゃね!錫杖のルート図を眺めながら、明日の好天を祈りつつ盃を進める。駐車場とはいえ、深山で虫の音を聞きながらの晩酌は、素晴らしき多幸感を授けてくれた。
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 あまりに心地よく、夜空をかけ布団にして眠りについた。。。

 翌朝は、結局6時過ぎに起床。アプローチもそんなに遠くはないし、疲れも溜まっているということで、余裕のお寝坊。しかし、後でこれが尾を引くことになるとは。。。二人とも初めてのルートなので、どれくらいのギアが必要なのか見当がつかずに悩む。でも、誰かに「あれとこれが○本」と言われて行くよりも、想像力、冒険心がかきたてられる。
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 最終的には、2人でアルパインQDを5、6本、QDを10本程度、適当なカム5、6本、ナッツ1セット、ロープ(8.5mm50m、9mm45m、これがあとで大変なことに!?)セットとした。

 登山口にある、電話機がない電話ボックス(登山届用ポスト)。
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 ここから、いきなり登りが続く。北鎌のダメージか、太ももの筋がパンパンでかなりの苦痛。ほんとに、こんな体で大丈夫なのか!?

 トラバース気味に山肌を登っていくと、クリヤ谷に出会う。渡渉して左岸を登っていくと、深い霧が流れて不意に錫杖が頭を覗かせた。え?デ、デカイ!?デカイとは思っていたけど、想像よりもデカくて呑まれてしまった。。。
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 右岸に渡渉すると、すぐにクリヤ谷舎。巨岩を左に巻き、錫杖前衛壁基部まで続く登山道を進む。途中から急なルンゼ登りになり、ふとももに疲労が残る足に堪える。突如、基部に到着(09:45)。

 どこに着いたのかわからないので、少し奥へ進んで様子を見る。岩伝いに進むと、巨大なカンテ&ルンゼに出た。これが北沢で、その上に大きく口を広げるクラックが「注文の多い料理店」だ。北沢の下には踏み跡も見えたので確信した。場所を確認できたので、5分ほど引き返して踏み跡が残るルンゼへ。ハーネス、ガチャにヘルメットを纏い、ダブルロープを結び合う。いよいよ、登攀開始だ!(10:10)

 と、ちょうどそこへカップルが現れた。「(ワタシ)こんにちは~!」「こんにちは!あれ?こんなところにルートがあるんだ~!?」「え!?こ、ここって左方カンテでは?」。どうやら、あの巨大なカンテ&ルンゼこそが「1ルンゼ」らしい!?
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 お礼を述べて、一旦ギアを撤収。靴も履き替えて、さらに奥へ奥へと進むと大きな沢に出た。これが北沢か!仕切りなおして準備に取り掛かり、いよいよホントの「左方カンテ(8P、Ⅳ+A0(フリーⅤ+)」に取り付く。1Pは師匠リード、草付きルンゼ(Ⅲ)。時間は遅れに遅れて10:40。
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 2P目のクラック&フェースはワタシがリード(Ⅳ)。ギア一式がこんなに重く、嵩張るものとは。
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 積極的にカムやナッツを決めていくが、ハーケン類も多く、セットしてから気付いて節約のために回収、なんてことを繰り替えす。40mくらいロープを伸ばすと、ロープはかなり重たい。ダブルロープの操作になれていないので、アルパインQDの長さ調節まで頭が回らずロープが屈曲して重くしているようだ。

 ちょっとしたテラスまで登り切ったところで、不意に巨岩に気持ちが飲み込まれてしまった。高所恐怖症ということ、慣れないダブルロープの操作で我を失ってしまった。すぐに師匠がフォローで登ってきた。「ちょっとすれば落ち着く」という言葉を信じ、回りの風景に目をやる。諦めがついたと言った方が正しいのかもしれないが、落ち着いてきた。

 仕切りなおして、3P(フェース、フリーⅤ+)を師匠がリード。ロープが40m程しか伸ばせないので、ピッチを切る。フォローすると、一瞬「え?」と思う垂壁があるが、よ~く観察すれば、あるんだな、ホールドが。
 3.5Pはそのままツルベでワタシがリードし4P目基部へ。写真は、3.5P目でビレーする師匠。
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 4P(チムニー、Ⅳ)目は師匠リード。奥へ入りすぎるとザックがひっかかって厄介!?
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 続いて5P(フェース、Ⅴ+)も師匠リード。2本のロープ長が違う状況で同じ人がトップを繰り返すと、2本のロープに長さのズレが生じて大変なことになることに気が付いた。けど、上手にやるしかない。ボルトベタうちで快適なフェース。冬だと、これでもキビシそうだが。。。
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 途中で1回ピッチを切り、6P目終了点はビバークできるくらいの大テラス。さて、ここでルートがわからなくなった。持参のルート図とは、明らかに様子が違うのだ。1P下まで懸垂して他ルートを探索したり、写真のクラックに入って様子を見たりもしたが、7P目が判然としなかった。写真よりも大きく右側に突っ込む案も出したが、師匠がクラックに入り偵察に行くと、横も手前もすっぱり切れたピナクル(尖峰)になっているらしい。突っ込んでいたらやばかった。。。
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 なぜ、このときに「注文の多い料理店」のトポを持っていなかったのか。さすれば、ルートがわかったのに(結果論)。時刻は14:30を回った。タイムオーバーだ。岸壁の奥には、さらに高さを持つ美しい峰に「アンタには、ちょっと早かったかな?」と笑いかけられているようだった。師匠のロープ、じゃなかった、足を引っ張ってしまったなぁ。。。
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 「降りよう」。そうと決まれば、ちゃっちゃと懸垂下降の準備。ルートの確認も含めて、ちょっと時間がかかるのを承知で、往路を懸垂することに。
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 スピーディに懸垂ピッチを伸ばすことができたが、屈曲したルート、慣れない長いロープ操作で途中、てこずった場面もあった。そして、ほぼ1時間かけて再び大地に立つことができた(15:30)。

 「秋の日はつるべ落とし」。降りると決まれば、もうチャッチャカ下っていくだけ。クリヤ谷で振り返ると、錫杖が「来れるもんなら、またおいで」とデンと構えているように思えた。写真、赤線が左方カンテと思われるが、いかがだろう??
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 駐車場には17:20到着。陽はすっかり西の峰に隠れ始めたものの、なんとか明るいうちに帰着することができた。

 帰路、錫杖が見える部分まで行ってみる。しっかり修行を積んで、いつの日か3ルンゼや1ルンゼに取り付ける日が来ることを祈りたい。
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 今回、二人とも初めてのルートというのが良かった。よく言う「核心はアプローチ」という言葉を思い知った。もしルートを知っている人に同行してもらえば「ココダヨ!」「コウイクンダヨ!」と迷わずに行けたかもしれないが、「そこかな?」「どこだろ?」と間違えながらもルートを探索することの楽しさ、冒険心こそが楽しかった。師匠、またいつか行こう!今度は前衛壁山頂だ!

 さぁ、明日からまた多忙な日々が始まる。がんばっ!!
by kanechins | 2007-09-24 23:31 | 「アルパイン」の独り言