槍ヶ岳・北鎌尾根 (2日目)

 04:50起床。夕方からガスに覆われたためテントの入口を開けるのが怖かったが、頭を出すと表銀座の稜線が見えたのでホッとした。すると突然、カップルが沢を登ってきた!?

 「途中、ビバークですか?」「北鎌沢出合はテント村状態なので、午前3時から登り始めたんです」って、す、すごい!我々ものんびりはしていられない。朝食はカップ麺とおにぎりで済ます。例の詰め替え用カップ麺を試してみる。冷めにくいのは良いが、やっぱり重たいゾ!?
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 追い立てられるようにテントを撤収し、06:00出発!
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 P8、P9と順調に進む。踏み跡もしっかりついており、ヤバいところはない。P9を間ノ沢方面に巻いたところで、独標(P10)が顔を覗かせた!
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 表銀座を眺める。昨日乗り越えてきた「水俣乗越」が見える。赤い点線を下ってきたわけだ。
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 急峻な尾根を進むと、だんだんと独標が近づいてきた!
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 07:00独標基部に到着。順調に進み、朝に出会ったカップルが独標の弱点であるバンドを登っているのが見えた。
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 出だしに岩を抱きかかえるように絶壁を乗り越えるところがある。年々崩壊が進んできているのか、完全に空中に投げ出されるかのようだ。残置シュリンゲがあったが使わず、カチを使って乗り越える。
 
 バンドはそこそこ広く安定してはいるが、ご覧のとおり、下はすっぱりと切れ堕ちているので慎重な行動が求められる。西に位置する鷲羽岳が完全に雲に包まれた。悪天の兆しだ、先を急ぐ。
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 小尾根を乗り越えたところで、よく記録で見かけるチムニーが現れる。残置ロープは回収されたようだ。ホールドを見つけられれば、核心はほんの2、3手。
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 P11付近で、とうとう槍が頭を覗かせた!てか、尾根は急峻だし、まだまだ遠いなぁ。。。
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 ふと振り返ると、カップルが稜線に上がっているのが望めた。ハーネスを装着し始めたので、懸垂下降するみたいだ。
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 あっという間に、稜線が深いガスに包まれ始めた。。。
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 完全にガスに包まれると方向感覚を失ってしまい、変な支尾根に行ってしまいそうになる。こうなると、もうどれがP12、P13かわからない。細かいアップダウンを繰り返しながら、トラバースするのか、稜線を行くのか、その都度悩むことになる。

 ガスに包まれたナイフリッジ的岩稜を進むと、急に崖の上に出た。ガスで先はよくわからない。間ノ沢沿いにクライムダウン。岩は安定しているものの、一歩間違えれば数百メートルは自由落下しそうな断崖の上。

 下りすぎて、師匠に「下り過ぎだよ~!」と声を掛けられる。左を見ると、切れたったコル(鞍部)がある。Ⅳ級並のトラバースをすると、そこには、今にも切れそうなシュリンゲ数本をつないだものが、ほぼ垂直のルンゼに掛かっていた。その先には、真っ赤な残置ロープが崖に吸い込まれるように垂れていた。。。

 ボルトも1本しかなく、残置ロープにはとても体重を掛けられない。師匠、慎重に下る。5、6m下ったところで、頭大の石がロープでズレて落ちていったようだ!なんとか安全地帯まで降りたようなので、今度はワタシが下り始める。
 ガスに包まれよくわからないが、すぐ先の尾根に大阪隊が取り付いているのか、頻繁にすんごい落石音と「ラク~!」の叫び声が響き続ける。一体、ココはどうなっているんだ??

 下り始めてから、とんでもないことをしているのに気が付いた。ルンゼはほぼ垂直、張り付いている岩は風化してザレザレのボロボロで、チェックするとどれも軽い音がして信用が置けない。頭大の岩も細かいヒビが入りまくり、カンタンにはがれそうだ。ステミング、キョン足、ジャミング、静加重バランス移動などあらゆるクライミング手段を使って、3点支持で下る。

 さらに事態は悪化!ロープ下端まで来ると、な、なんとロープは途中で終わり、空中に浮いているのだ。そりゃ、回収できないわけだ。。。オーマイ。フリーソロ状態でボロボロの垂壁をさらに2、3mのクライムダウン。下は数百メートルの断崖。かろうじてトラバースできそうなところまでの10数m、心臓が止まるような勢いであった。脳の奥でアドレナリンがピュピュッと出る感じがし、そのせいか恐怖心が薄らいできたこと自体がさらに怖い。。。

 明らかに、ノーマルルートとは違うようだ。ここで後続カップルに追いつかれるが、彼らはなんと千丈沢側を巻きはじめた。そっちが正解か、今となってはわからない。師匠みたいなベテランならいざしらず、ワタシはロープを出すなり、ちょっと引き返してルートを探索するなどするべきであったと、反省。。。ここが、今回の核心となってしまった。。。

 気を取り直してさらに進むと、トラバースルートが急に無くなった。。。懸垂用の支点もあったが、このままトラバースし続けて稜線から離れ過ぎるのもマズそうだ。トラバースしていたら、小槍の基部まで行ってしまったという人たちも多いようだし。

 師匠がロープだけ持って、偵察に稜線へ。この場所はとても岩が安定していたので、ここを登り稜線へ戻る。ここで大阪組に追いつくが、彼らはトラバースルートを選択。
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 下手に稜線に上がると懸垂しないといけないし、巻きすぎるとガレガレの急なルンゼを登る羽目にもなりそう。ガスで先が読めない中、野性的判断で稜線、トラバースを繰り返す。
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 突如、写真のプレートが現れた!「諸君頑張れ」、遭難碑かもしれないが、少なくともハーケンのイラストで示された先には槍があるようだ。ガスでルートが判然としないなか、このプレートには随分と励まされた。(09:13)
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 少し空が明るくなり、うっすらとガスが晴れてきたようだ。突如現れた尖峰。きっと、あの「アルペン踊り」を踊る小槍に違いない。♪アルプス一万尺 小槍のう~えで・・・できるかいっ!!
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 とにかく、トラバースは最少に、できるだけ岩稜伝いに登り続ける。大きな尾根を乗り越えると、突如として巨大な岩峰が立ちはだかった。「な、なんだコレは??」
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 どうやら、コレが槍の穂先のようだ!確かに、とんがった先に人がいるのが望めた!さぁ、いよいよ北鎌尾根もフィナーレを迎える!(09:40) 

 振り返ると、ガスが少しづつ晴れてきて、大阪隊が登ってくるのが望めた。稜線伝いに登ってきたにも関わらず、北鎌平がどれかわからなかった。。。
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 槍の穂先に取り付く師匠。上部クラックが望める。
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 北鎌尾根をバックにワタシ。ココからが一番楽しかった!
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 2つの顕著なクラックを越えると、だんだんと尾根が狭くなってきた。不意に登山者が見えた!いよいよ、槍ヶ岳山頂だ!!(10:10着)
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 念願の北鎌尾根を無事に踏破!一緒に歩き通してくれた師匠と熱く握手を交わし、祠で記念撮影!やたー!!
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 20分ほど遅れて、大阪隊も到着!写真が北鎌尾根の最後の部分。この上は山頂だ。
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 しばらく、大阪隊や山頂にいる登山客と話をする。大阪隊は東鎌を下って、できれば一気に中房まで下るという。パワフルやなぁ。わずかな時間しか一緒にいなかったものの、なんだかず~っと一緒に登り続けてきたような感覚が残った。写真は、賑やかな大阪隊!右端の方は、初槍ヶ岳が北鎌とか!?か、かっこよすぎる~!
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 すると、見覚えのある外国人がノーマルルートで上がってきた。「あれ~、ジャステシンじゃない~!?」。アートウォールでたまに見かける奴らが登ってきた。こんな偶然ってあるんだ~。しばらく話をして、先を急ぐ我々は下山開始。(10:50)
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 名残惜しいが、今日中に上高地まで下山しないといけない。
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 長大な槍沢カール(圏谷)を下らないといけない。ホントの核心はココからか!?写真の小屋は思い出深い「殺生ヒュッテ」。
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 振り返ると、槍が「またおいで~」と輝きを放っていた。
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 ふと岩肌に目をやると「イワツメクサ(岩爪草)」が風に揺れていた。そういえば、今回初めて花に気が付いたなぁ。
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 槍沢を振り返る。ココから小雨がぱらつくようになってきた。
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 横尾にあった看板を拝借。黄色い点線が、今回ワタシたちが歩いたルート。(14:35)
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 延々と続く道を、ひたすらひたすら歩き続ける。すると、下界の風景が広がった!上高地バスターミナルだ(16:40)!とにかく、牛乳を買ってゴキュゴキュ乾杯!う、うまい!
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 観光客もまだ多いので早めにバスに乗り込む。バスの中は爆睡状態。沢渡駐車場にある「無料足湯」で疲れを癒す。
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 激しくも楽しい2日間であった。岩トレーニング、歩行トレーニング、素晴らしき仲間に恵まれ、念願の1泊2日・北鎌尾根踏破~!師匠、ホントにありがとうございました!結局、ロープもクライミングシューズも使わなかったね。。。

 さぁ、これで連休が終わりかと思ったら大間違い!?錫杖岳目指して、ワタシたちは新穂高温泉へ向かうのであった。。。   【続く】
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by kanechins | 2007-09-23 21:23 | 「アルパイン」の独り言 | Comments(4)
Commented by 美都 at 2007-09-28 23:51 x
明日は小川山で朝3時起きなのに・・・

も~~~

かねちんさんのブログに釘付け!!!


あああ!!
いいな!!
羨ましい!!

でも、怖い!!!
10年後に登れたらいいな。

あ、もう、ばあちゃんやな。笑
Commented by S44藤原 at 2007-09-29 18:33 x
いつも貴君のHP楽しませてもらっています。懐かしい北鎌が出てきて見入ってしまいました。私はS46の秋に北鎌沢右俣から登り独標はトラバース、S47、3月にP2から登りやはり独標はトラバース。出だしの2M程の乗り越しは秋は簡単でしたが3月はびびりました。トップで「落ちる」と叫んだら「落ちてもいいから行け」と後ろから非情な声援。右手はピックで左手はアイスハーケンより確実な素手の爪を立てて乗り越しました。その後のルートは凄く簡単で(ガスってなかった)アプザイレンする場所など無かったように記憶しています。次に怖かったのが槍の降り、鉄梯子にアイゼンが滑ってその都度ドキッとしました。懐かしい思い出です。いい記録を見せてもらいました。有難う。ちまみに私も北鎌が初めての槍でした。
これからも安全に山行を楽しんでくださいね。
Commented by kanechins at 2007-10-02 00:30
★美都さん
 あちゃ~、寝不足になったのは、私だけではないですね~!!
 総合力が試される北鎌。美都さんなら、そんなに遠くない未来に行けそうです。ルートを知っている人についていくのなら、美都さんの体力、登攀力ならもう大丈夫!?
 北鎌って、目標のひとつとしては、とても魅力的だと思います!しっかり充電して、いつの日か実現できることをお祈りしてます!
Commented by kanechins at 2007-10-02 00:30
★藤原さま
 いつもご訪問、ありがとうございます!昭和の北鎌ですか!写真をご覧いただいて、当時と比較して様子はどうでしょう??初春にも北鎌にトライしてるんですね!す、すごい!
 これからも安全第一で山と向き合って生きたいと思います。藤原大センパイ、今後とも、ご指導をお願いします!!


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