北岳バットレス day2(下部フランケ~Dガリー奥壁)

 2013年 9月29日(日)
 午前02:10起床。結局、sonoは一度も目覚めず10時間近く眠れたらしい、すごいな。それでもまだ眠いらしいが、きっと寝過ぎだと思う。

 お湯を沸かし朝食を摂り、いつになく早くテントを撤収。ヘルメットにヘッドランプを装着し、03:20に白根御池を出発。二俣のトイレで、恒例の朝のお勤め。毎度、タイミングが良いことで。登攀用具をまとめ、幕営装備を河原にデポジット。04:00、二俣発。

 後ろから迫って来るヘッドランプに煽られながら大樺沢を辿るが、「漆黒の闇」と「沢の音」に惑わされ、右往左往しながら登る。C沢を過ぎて「おかしいなぁ、こんなに登ったか?」と思っていたらsonoに「さっきのトコじゃね?」と。「こんなヤブヤブしてた沢だったっけ?」と思いながらも沢を詰めると目印の大岩が。でかした、sono。04:45にD沢出合。初夏に比べると、随分と草が伸び、印象がかなり違う。

 暗闇の中、ゆっくりD沢を詰める。7月に残っていた大きな雪渓は跡形もなく消え、五尾根支稜の岩肌が眼前に。05:05に基部。雪渓が無い時期だと、取り付きがすごく高い所に感じる。やっと周囲が明るくなってきた。タイミングとしてはバッチリだ。

 ザックをアンカーに固定し、「ギアの選定」と「ダブルロープの結束」。朝日がバットレス上部に当たり輝いている。感激に浸るのも束の間、驚いたことに空のワイン瓶が取り付きに捨ててある。な、なんなのだ?

 05:40、下部岩壁の登攀開始。アプローチシューズのまま、1Pはワタシがトップ。40m弱ロープを伸ばしてピッチを切る。写真は、途中で振り返ったところ。
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 程なくして、お陽様が顔を覗かせた。
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 2Pはsono。カンテを越えると、すぐに姿が見えなくなる。
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 グイグイとロープを伸ばして50m一杯まで。まだ登る気配があったのでセルフビレイを解除し、コンテで少し上がると解除コールが。

 フォローで登ると、下部フランケには既に別パーティが取り付いていた!は、はやっ。Dガリーからの巻きも考えたが、やっぱり正規ルートを辿りたいので待つことに。
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 クライミングシューズに履き替え、06:30に下部フランケ(4級下、V-、185m)の登攀開始。

 下部フランケ1P目(3P目・V-。以下、括弧内は通算ピッチ数)はワタシ。ルンゼ内を詰めると途中で一瞬迷う場所があるが、周りをしっかり見て弱点を抜ける。浮いた石が多いので、ロープが擦れて落石を起こしやすいので注意する。

 40mちょっとロープを伸ばす。アンカーは先行パーティーが使っていたのでさらに登り、大きな石で支点を構築。先行パーティーはそのまま4尾根の方へトラバースし、下部フランケは貸し切りに!急にDガリーに静けさが訪れた。歩きで基部まで。

 下部フランケ2P目(4P目、Ⅳ+)はsono。
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 フェースの出だしをなんとかフリーで抜けた!が、抜け口が悪そうだった。くさびハングを越え、前回にピッチを切った所も越えてロープを伸ばし、今回も50mオーバーまで伸ばしてくれる。フェースの体感は、フリーだと5.10+位に感じる。
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 下部フランケ3P目(5P目、Ⅳ+)はワタシ。V字状コーナーの内面登攀から始まる。なんか意外に悪くて支点を取りまくっていたら、後で「悪いところで平気でランナウトしたまま突っ込むクセに、ワケわからん」とsonoに笑われた。
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 思い切りが必要なカンテへの乗り上げを2度ほど繰り返すと、前回の撤退ポイントへ。残置してしまったシュリンゲと捨てビナを無事にクリーンできたのでよかった、ほっ。まだロープに余裕があったので、一杯まで伸ばす。ここの核心は、屈曲したくそ重たいロープだった。

 下部フランケ4P目(6P目、Ⅳ)はsono。「左にトラバースできそうなバンドを探しながら行って」と何度も言ったのだが、それらしき場所が見当たらないみたいでどんどん登って行く。
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 登りすぎると大変そうとsonoも思ったのか、クライムダウンしてきて、適当な所から左にトラバースを始めた。

 「適当な所で早めに切ってね」と言ったのに、どんどんロープを伸ばし、Dガリーまで行ってしまった。フォローするもとても「バンド」とは呼べない場所だったが、随所にハーケンが打ってあったので、恐らくこれが正解だろう。

 しかし!核心は最後に訪れた。下り気味のトラバースは、フォローの方が怖い。最後はボロっボロの草付きのクライムダウンだったので、冷や汗が止まらなかった。Dガリーに入るとリングボルトが打たれていたので、やはり正解か。08:55、Dガリー合流。
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 アプローチ1P目(7P目)はワタシ。写真は、登り始めてすぐに振り返ったところ。カンタンなルンゼ内をノープロ(テクション)でロープ一杯伸ばす。
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 続く、アプローチ2P目(8P目)はsono。
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 今回も50m以上伸ばしてくれて、セルフ解除で同時登攀。いよいよ、憧れのDガリー奥壁が近づいてきた。sonoの頭の上にある多段ハングがそれ。右上はマッチ箱のコル。
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 先ほど、なかなか解除のコールが無かったが、行って納得。なんと取り付きに巨大ウoコが!?丁寧に石を載せてあるが、広いテラス、他に幾らでも場所があったのでは?強烈な臭いと紙まで残置され、捨てられたワインボトルといい、本当に残念でならない。。。

 気を取り直して。さぁ、いよいよ念願のDガリー奥壁(3級上、Ⅳ+、120m)だ。09:35、登攀開始。

 Dガリー奥壁1P目(9P目、Ⅴ+)のハング帯はワタシに譲ってくれた、ありがと。ハングというよりも、幾つかマントル課題が続く感じ。ジャムも効くし、カムのキマリも良く、のびのびと登ることができた。無事にオンサイトを収め、ピッチを切る。長いこと夢見てきたピッチだっただけに、涙がこぼれそうになった。こんなに感激したのは、いつ以来だろう。やっぱ、山っていいな。

 sonoも快適に登ってきた。恐らく、2人ともめっちゃニヤけていたと思う。
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 Dガリー奥壁2P目(10P目、Ⅴ)はsono。本当に天気が良く、マッチ箱のコルを懸垂で降りてくる人たちも実に楽しそうだ。赤いスラブに稲妻のように走るクラックライン沿いに登る。
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 小さいハングを越えると姿が消えたが、50m一杯出てもまだ登っていく。トランシーバーから「ワイドの取り付きまであと数m」ということで、セルフを解除し同時登攀。一気に60m、2ピッチ分を登ってしまった。見事、ワイド手前でピッチを切ってくれたsono。
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 Dガリー奥壁3P目(11P目、Ⅳ)はワタシ。出だしのワイドは体が入るほど広くなかったため、体を乗り出して豪快に越えると上部要塞だ。
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 チムニーを抜けた所から振り返る。
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 大崩落によって「あの」チムニーは本当に消失していた、涙。写真は、2009年10月4日にAWC2の皆と第4尾根を登ったときのもので、今は無き「枯れ木テラス」と、今回崩落した岩。右側の三角形の岩が全て崩落し、奥壁の最終ピッチも消失。
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 崩落後、ここは新たに4尾根との合流点となった。抜け口はルンゼっぽい所が1カ所あるだけなので、ここで渋滞が発生。先行の2人パーティー、5人パーティーが並んでいる。
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 ピッチを切るか悩んだが、まだロープは半分も出ていないので一気に抜けることにする。待つこと、なんと40分!いよいよ順番が回って来た。随所にボルトやハーケンが打たれているので、安心して登れる。フリーで5.9有るか無いかで立体的な動きが楽しい。先行パーティーが詰まっていたのでハイマツで支点を作り、sonoを上げる。
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 後は、終了点までロープアップを兼ねて歩き11:45に登攀終了。渋滞さえ無ければ、1時間ちょっとの登攀であった。バックは鳳凰三山。
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 富士さん、応援ありがとう!
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 終了点から稜線って、意外にある。息を切らして登り詰めると、間ノ岳が出迎えてくれた。
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 そして、12:20に日本第2位の高峰「北岳」山頂(3,193m)へ!
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 感激の余韻に浸っていたいところではあったが、帰りのバスに間に合わなければならない。まだ登攀は終わっていないのだ。名残惜しいが、12:30に下山開始。

 12:35に吊尾根分岐。ココから「八本歯のコル」までは道が良く整備されていて、アッという間。しかし、そこから大樺沢まで、やはり先日の大雨でかなり荒れており、大変。

 登ってきたルートを振り返るのも、アルパインの醍醐味。写真が600mの大岸壁、北岳バットレス。
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 Dガリー奥壁を拡大したところ。赤点線は、今回攀じ登ったルート。
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 下部フランケを含めた全体イメージ。こうやってみると、結構長いなぁ。
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 14:00に二俣へ帰着。デポした荷物を回収し、14:30に二俣発。「バスは17:00まであるんじゃね?」と言われたが、なんか行きのタクシーで「最終は16:00だから気をつけてね」と言われた気がして、念のために早めに降りることに。

 二俣から50分、15:20に広河原着。ウソかホントかわからないが「次のタクシーが最終だよ」と言われた。いやぁ、焦って正解であった。これで乗り遅れた日には、いつかの過酷なロード再来になるところであった。
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 初めてバットレスを登ったのは、飯田山岳会時代だから2006年9月だ。写真は当時、マッチ箱の上から撮影したDガリー奥壁。このときに「いつかこの壁を、自力で登ってやりたい!」と思ったのを覚えているし、これがクライミングを本格的に始める原動力でもあった。そういえば、BrianやTakakoも一緒だったなぁ。
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 あれから7年。何度かトライするチャンスはあったが、2010年9月には取り付きで雨敗退。今考えたら、当時の実力(登攀能力だけでなく、支点構築やルートファインディングなど)では、恐らく登れなかったと思う。

 次にチャンスがあったのは2013年7月。メンバーの体調不良で下部フランケ上部からの撤退。しかし、その後雨に見舞われ、あのまま突っ込んでいたら3人パーティーだったし、濡れたスラブに苦戦を強いられ、多分ビバークになっていたと思う。撤退技術の確認も出来たし、これはこれで正解だったと思う。

 そして、今回。念願だった「青空の下での赤いスラブ」を登ることができた。永年の夢が叶った。続けていたら、登れることがわかった。本当にクライミングをやってきて良かったと思った。今まで色々なルートに付き合ってくれて相互研鑽できたsono、そしてここまで育ててくださった皆さんに、ココロから感謝です。

 ちょっと抜け殻っぽくなってしまったが、また次の目標を定めて、これからも頑張りたいな。
 引き続きみなさん、よろしくお願いします!
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by kanechins | 2013-09-29 01:01 | 「アルパイン」の独り言 | Comments(2)
Commented by いちこ at 2013-10-16 22:40 x
読んでて、何だか感動したな~。
山も岩も色んなことを教えてくれる。
努力する原動力と、克服したからこその幸せな景色や時間。
かねちん、そのさん、すごいです!
Commented by kanechins at 2013-10-18 08:20
いっちゃん。ほんと、ずーっと憧れていたルートなんです。自然は色々なことを教えてくれるし、癒してもくれるし、苦労も感動も与えてくれる、学校みたいなもんですね、笑。
何かを続けるって難しいけれど、これからも頑張ります!またどこかの山か岩で!


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