前穂高岳・東壁(北壁~Aフェース) day2 後編

 09:50、いよいよ北壁の登攀開始。

 1P目:恒例により、ワタシがトップ。トポでは「歩き」になっているが、バンドのトラバースはざれざれで悪そうだったので、万全を期してロープを出した。もっとも、途中はボロボロでプロテクションは取れなかったが^^;。

 写真はB沢末端でビレーしてくれるsono。上の壁がDフェースになる。ザレザレだったので、結局、アプローチシューズのまま登攀開始。
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 このビレーポイント(以下、BP)は、いつ落石が来るかとヒヤヒヤもの。上部を撮影すると、こんな感じ。
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 傾斜はそれほどでもないが、まるで「砂の山」を登っているようでズリズリに滑って悪い。自分ならここから取り付くだろうという場所に、ちゃんとハーケンによるBPが!過去、多くのクライマーがこのハーケンを頼りに壁に取り付いてきたと思うと感慨深い。
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 2P:sono。凹核から大岩を目指して登る。比較的クラックが発達しているので、支点は取りやすい。
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 2PのBPから大岩を見上げる。この右側が松高カミン。偵察すると、とにかく砂がのりまくっていて悪そう。左はチムニー。「どっちに行くか?」って聞かれたら、そりゃズリズリよりチムニーでしょ!が、「左はチムニー」というのは大きな思い違いであった、涙。
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 一見、楽しそうなチムニー。だが、行ってみると幅が狭くてザックを背負った身では中に入れず悪い!プロテクションも下に1本キャメ#1で取っただけ。写真がチムニーの出口だが、かなりのどっかぶり!アプローチシューズでスメア張ってパワーでマントル返したものの、その後は支点が取れずBPまでランナウト。
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 TCUで終了点を構築。うーん、どうもルートが違うぞ!?そのはず、ずっと左側を見てみるとルンゼが!え?トポにはチムニーって書いてあるじゃない!?どうやら大きく左に回りこむのが正解か?我々が登った3P目のラインを赤線で示すとこんな感じ。
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 4P:sono。すぐに大テラスに抜けられるとおもったら、これまたザレザレのスラブ。見えなくなってからが相当悪いみたいで、かなりてこずっている様子。ロープスケールで45mほど伸ばしてくれる。
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 北尾根3・4のコル方面。
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 5P:ワタシ。いきなりチムニーだが、やはりザックが邪魔で中に入れないし、意外にスタンスがなくアプローチシューズでスメアを張って苦戦。かぶったチムニーを避けるように左に回りこむと、緩傾斜帯に回りこめた

 6P(Ⅲ+):sono。次のピッチの基部まで40mほどロープを伸ばす。コンタクトライン上に残置ロープが見える。
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 ビレーしている間に手足がつりはじめた。寒さ?水分不足?BPに着いたら、妙に息が上がってる。それを見越してか、7P目もsonoが行ってくれることに、ありがたや。大岩の左側にラインを求めて登っていくが、てこずっている様子。
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 ここでも40mほどロープを伸ばしてくれた。重たいザックにアプローチシューズのせいか、とてもⅢ+には思えなかった。それでも、最後のピッチはⅢとのことなので、トップを行かせてもらうことに。

 8P(Ⅲ):ワタシ。スラブからスタート。BPを振り返る。
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 最後は楽勝、かと思ったら、ラインがわからない。抜けそうなハーケンを頼りに左奥のコーナー状チムニーを登ると、上部はかぶっているわ、奥行きがあってジャムが効かないわで初のテンション。どう考えても突破できそうになかったので、ギアを回収しながらクライムダウン。

 「おかしい!?」と思って少し戻ると、登れそうなチムニーが!あれ、なぜ見逃したんだ?このチムニーも結局体が入らずに奮闘的な登りを強いられ、やっとの思いで緩傾斜帯へ。明神方面を望む。
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 ロープ一杯伸ばしてビレー。ポツリポツリと雨が当たり始めた。が、とにもかくにも抜けられてよかった!
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 前穂高岳(3,090m)に15:15登頂!当たり前だが、こんな時間なので山頂には誰もいなかった。
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 ゆっくりしたいところだが、確か上高地までのコースタイムは4時間。パンを水と一緒にのどに押し込み、ロープを束ねて荷をまとめ、15:30には下山開始。一般道はマーキングはしっかりしているし、石は基本的に浮いていないし快適。慌てず、でもスピーディーに下山。
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 いつ歩いても、長い下りだ。右下が岳沢ヒュッテ、左上が上高地。
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 さようなら、イワツメクサ。
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 お盆で賑わう岳沢ヒュッテで水分補給をし、すぐにまた下り始める。この辺りから、ポツリポツリと雨が当たるように。滑らないよう慎重に足を運び、日が完全に沈む前の18:55に河童橋へ!西穂方面を振り返る。テント装備にロープにギアで荷は重く、さすがに足にきたなー。
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 夜の上高地は、お盆だからか思ったよりも賑わっている。バスターミナルに到着する頃には、完全に夜の帳(とばり)が降りていた。幸いにもタクシーは4台ほど待機していた、ほんとによかった!若いカップルに声を掛けて相乗りし、無事に沢渡へ帰着。多分、我々は臭ったことでしょう、ごめんなさい。

 実質、フル装備を背負っての14時間行動。久しぶりに過酷だったなー。Ⅲ+だからとそれほど真剣に軽量化を考えていなかったし、クライミングシューズに履き替えていたらまた印象が違ったのかもしれない。堆積したガレやザレは本当に不安定で、常に1歩1歩、慎重な歩みが求められてメンタル面でも消耗が激しかった。

 初登者には、本当に頭が下がる。登っている最中は「二度とクラシックルートはやらんぞ!!」とココロに誓ったものだが、もう既に「楽しかった思い出」だけが残りつつある。途中でルートを誤ったものの、全般的にはルートファインディングはヨカッタと思われるし、たまたまだがお互いの得意系なピッチをそれぞれ担当でき、また我々の持ち味でもある「下降の早さ」でなんとか無事に下山することができた。そういう意味では、我々の持っている技術、体力をフルに試された、充実した1本であったとも言える。

 ここまで育ててくれた先輩方、そして全力で力を合わせてくれたsonoにココロから感謝している。でも、やっぱ、しばらくは岩はいいかな^^;。

装備:TCU1セット、キャメロット #.5、#.75、#1(ちょうど良い組み合わせであった)
    小型ナッツ数本(TCUがあれば不要だった)
    ダブルロープ、ヌンチャク4本、アルパインヌンチャク6本、シュリンゲ他
    アイゼン、バイル、ハンマー、ハーケン数本 他
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by kanechins | 2011-08-14 23:36 | 「アルパイン」の独り言 | Comments(6)
Commented by アノニマス at 2011-08-19 23:43 x
お疲れ様でした。わくわく、どきどきしながら読みました。いつか、かねちんさんみたいに登れるようになりたい。
Commented by kanechins at 2011-08-22 23:38
☆アノニマスさま
 コメント、ありがとうございます^^。稚拙な日記に恐縮です。
 ワタシ自身、まだまだ課題は色々とありますが、皆様に支えられながらもこれからも安全に留意しながら精進してまいりたいと思います。
 アノニマスさんも、いつか機会があればぜひご一緒ください^^。
Commented by アノニマス at 2011-08-23 01:34 x
安全に留意しながらも、常に創造的なクライミングを実践しようという心意気が伝わってきます。いつかご一緒できれば光栄です。
Commented by kanechins at 2011-08-23 23:11
☆アノニマスさま
 高いところが苦手なので、人一倍安全に気をつけている、というかビビっていると言ったほうが正しいのかも^^;。別段、限界を求めて行った訳ではないのですが、行ってみたらかなり深刻な事態だったという感じです。
 地元のお方でしょうか?どなた様かわかりませんが、またぜひお声がけください^^。
Commented by アノニマス at 2011-08-24 00:25 x
松本に住んでいます。阿南のシモジマ所長にお世話になりました。
Commented by kanechins at 2011-08-24 00:57
☆アノニマスさま
 え!!あ、あの、「阿南」って単語が出てくるってことは、同業者ですか??びっくりしました^^;。まだ具体的にどなた様か察しがつきませんが、こちらこそどうぞよろしくお願い申し上げます^^。


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