前穂高岳・東壁(北壁~Aフェース) day2 後編
2011年 08月 14日
1P目:恒例により、ワタシがトップ。トポでは「歩き」になっているが、バンドのトラバースはざれざれで悪そうだったので、万全を期してロープを出した。もっとも、途中はボロボロでプロテクションは取れなかったが^^;。
写真はB沢末端でビレーしてくれるsono。上の壁がDフェースになる。ザレザレだったので、結局、アプローチシューズのまま登攀開始。
このビレーポイント(以下、BP)は、いつ落石が来るかとヒヤヒヤもの。上部を撮影すると、こんな感じ。
傾斜はそれほどでもないが、まるで「砂の山」を登っているようでズリズリに滑って悪い。自分ならここから取り付くだろうという場所に、ちゃんとハーケンによるBPが!過去、多くのクライマーがこのハーケンを頼りに壁に取り付いてきたと思うと感慨深い。
2P:sono。凹核から大岩を目指して登る。比較的クラックが発達しているので、支点は取りやすい。
2PのBPから大岩を見上げる。この右側が松高カミン。偵察すると、とにかく砂がのりまくっていて悪そう。左はチムニー。「どっちに行くか?」って聞かれたら、そりゃズリズリよりチムニーでしょ!が、「左はチムニー」というのは大きな思い違いであった、涙。
一見、楽しそうなチムニー。だが、行ってみると幅が狭くてザックを背負った身では中に入れず悪い!プロテクションも下に1本キャメ#1で取っただけ。写真がチムニーの出口だが、かなりのどっかぶり!アプローチシューズでスメア張ってパワーでマントル返したものの、その後は支点が取れずBPまでランナウト。
TCUで終了点を構築。うーん、どうもルートが違うぞ!?そのはず、ずっと左側を見てみるとルンゼが!え?トポにはチムニーって書いてあるじゃない!?どうやら大きく左に回りこむのが正解か?我々が登った3P目のラインを赤線で示すとこんな感じ。
4P:sono。すぐに大テラスに抜けられるとおもったら、これまたザレザレのスラブ。見えなくなってからが相当悪いみたいで、かなりてこずっている様子。ロープスケールで45mほど伸ばしてくれる。
北尾根3・4のコル方面。
5P:ワタシ。いきなりチムニーだが、やはりザックが邪魔で中に入れないし、意外にスタンスがなくアプローチシューズでスメアを張って苦戦。かぶったチムニーを避けるように左に回りこむと、緩傾斜帯に回りこめた
6P(Ⅲ+):sono。次のピッチの基部まで40mほどロープを伸ばす。コンタクトライン上に残置ロープが見える。
ビレーしている間に手足がつりはじめた。寒さ?水分不足?BPに着いたら、妙に息が上がってる。それを見越してか、7P目もsonoが行ってくれることに、ありがたや。大岩の左側にラインを求めて登っていくが、てこずっている様子。
ここでも40mほどロープを伸ばしてくれた。重たいザックにアプローチシューズのせいか、とてもⅢ+には思えなかった。それでも、最後のピッチはⅢとのことなので、トップを行かせてもらうことに。
8P(Ⅲ):ワタシ。スラブからスタート。BPを振り返る。
最後は楽勝、かと思ったら、ラインがわからない。抜けそうなハーケンを頼りに左奥のコーナー状チムニーを登ると、上部はかぶっているわ、奥行きがあってジャムが効かないわで初のテンション。どう考えても突破できそうになかったので、ギアを回収しながらクライムダウン。
「おかしい!?」と思って少し戻ると、登れそうなチムニーが!あれ、なぜ見逃したんだ?このチムニーも結局体が入らずに奮闘的な登りを強いられ、やっとの思いで緩傾斜帯へ。明神方面を望む。
ロープ一杯伸ばしてビレー。ポツリポツリと雨が当たり始めた。が、とにもかくにも抜けられてよかった!
前穂高岳(3,090m)に15:15登頂!当たり前だが、こんな時間なので山頂には誰もいなかった。
ゆっくりしたいところだが、確か上高地までのコースタイムは4時間。パンを水と一緒にのどに押し込み、ロープを束ねて荷をまとめ、15:30には下山開始。一般道はマーキングはしっかりしているし、石は基本的に浮いていないし快適。慌てず、でもスピーディーに下山。
いつ歩いても、長い下りだ。右下が岳沢ヒュッテ、左上が上高地。
さようなら、イワツメクサ。
お盆で賑わう岳沢ヒュッテで水分補給をし、すぐにまた下り始める。この辺りから、ポツリポツリと雨が当たるように。滑らないよう慎重に足を運び、日が完全に沈む前の18:55に河童橋へ!西穂方面を振り返る。テント装備にロープにギアで荷は重く、さすがに足にきたなー。
夜の上高地は、お盆だからか思ったよりも賑わっている。バスターミナルに到着する頃には、完全に夜の帳(とばり)が降りていた。幸いにもタクシーは4台ほど待機していた、ほんとによかった!若いカップルに声を掛けて相乗りし、無事に沢渡へ帰着。多分、我々は臭ったことでしょう、ごめんなさい。
実質、フル装備を背負っての14時間行動。久しぶりに過酷だったなー。Ⅲ+だからとそれほど真剣に軽量化を考えていなかったし、クライミングシューズに履き替えていたらまた印象が違ったのかもしれない。堆積したガレやザレは本当に不安定で、常に1歩1歩、慎重な歩みが求められてメンタル面でも消耗が激しかった。
初登者には、本当に頭が下がる。登っている最中は「二度とクラシックルートはやらんぞ!!」とココロに誓ったものだが、もう既に「楽しかった思い出」だけが残りつつある。途中でルートを誤ったものの、全般的にはルートファインディングはヨカッタと思われるし、たまたまだがお互いの得意系なピッチをそれぞれ担当でき、また我々の持ち味でもある「下降の早さ」でなんとか無事に下山することができた。そういう意味では、我々の持っている技術、体力をフルに試された、充実した1本であったとも言える。
ここまで育ててくれた先輩方、そして全力で力を合わせてくれたsonoにココロから感謝している。でも、やっぱ、しばらくは岩はいいかな^^;。
装備:TCU1セット、キャメロット #.5、#.75、#1(ちょうど良い組み合わせであった)
小型ナッツ数本(TCUがあれば不要だった)
ダブルロープ、ヌンチャク4本、アルパインヌンチャク6本、シュリンゲ他
アイゼン、バイル、ハンマー、ハーケン数本 他