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by kanechin
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八ヶ岳・赤岳主稜(アルパインCL)

 2011年 3月 5日(土)

 八ヶ岳山荘に駐車し(1日500円)、登山届を提出。06:55、久しぶりに幕営装備+ギア類の重たい荷物を肩に感じながら出発。
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 08:15(+01:20) 美濃戸山荘通過。好天が約束された週末とあって、登山客だけでなく大きな三脚を担いだカメラマンも多い。
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 10:30(+02:15)、行者小屋着。まだテントは1張のみで、好きなところに幕営可能!
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 テントを設営し、早速ギアをまとめて中山乗越へ偵察。当初は初日に石尊稜で足慣らしする予定であったが、予報では明日よりも今日の方が好天っぽいので計画変更。一旦、ベースキャンプ(BC)へ戻る。バックは阿弥陀岳。
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 ちょっと遅いが、sonoとなら大丈夫だろうと11:40に行者小屋BC発。文三郎尾根をゆっくり登る。
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 高度を稼ぐに従い、白く輝く北アルプスの峰々が望める。地球は丸い。
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 大同心、横岳方面も白く雪をまとって輝く。
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 去年に登った阿弥陀岳・北稜。隣のテントの2人組が尾根に取り付いているのが望める。
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 中央のリッジが今回の目標であり、永年の憧れでもある「赤岳西壁主稜(2級下、Ⅳ-)」。好天の下でトライできる幸運に感謝。
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 と、突然に阿弥陀方面から轟音が。北稜上部から下部の斜面が雪崩れた。締まった雪面に新雪が2~30cmほど乗っているので、今日は要注意。
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 硫黄岳方面。
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 中岳と阿弥陀岳兄弟。絵になるなー。
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 12:30、トラバース分岐点へ。この時間なら渋滞はないかと思っていたが、少なくとも6人は下部に。写真はトラバース途中から見る取り付き。トラバース中は上部からひっきりなしに雪や氷片が流れてくるので、さっさと抜ける。
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 12:40(+01:00)、取り付き着。ここへのトラバースは滑落が許されないパート。
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 取り付きにはペツル2本の支点。右側にもハーケンがあり、待機者の自己確保が取れる。
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 30分ほど待機し、いよいよ我々の番。13:10、登攀開始!頼んだよー、sono。
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 1P目、ワタシ。チョックストンはガバで、ステミングを張って上部を越える。すぐ上に前のパーティがピッチを切ってロープワークの練習をしていたので、挨拶して追い越させていただく。ロープが屈曲するが、強引に登ると終了点。テラスには2ヶ所にそれぞれ2本づつ支点がある。ところが、この4人は同一パーティーとのことで、さらに先を行かせていただき感謝。

 2P目はツルベでSono。出だしが悪そうであったが、弱点をついて登る。ロープを伸ばし、岩で支点構築。天気良し、風なし、快適!心が躍る。なんて楽しいのだろう。滑りも良いけど、山も良いなー^^。
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 3P目、ワタシ。出だしのちょっとした岩場を越えると雪稜に。40mほどロープを伸ばし、1本だけペツルが打たれている小岩で確保に入る。写真は振り返ったところ。
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 左上が上部岩壁、右側中央が中間の岩場。
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 フォローするsono。
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 先行パーティが上部岩壁下部を登っている。
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 一歩一歩をかみ締めるように登る。
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 4P目、sono。中間の岩場下部に支点があったようで、ピッチを切る。
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 5P目、ワタシ。新雪でスタンスやホールドが埋り、適当にピックやツァッケ(アイゼンの前歯)を乗せ、ぐんぐん突っ込む。テラスまで登ると雪のスラブ面へ。見た目より急であり、新雪で雪が崩れやすくて気分は花崗岩スラブに立ち込む感じで慎重に^^;。ペツル1本が見えたので、そこでピッチを切る。
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 随分と阿弥陀岳(2,805m)の高さに近づいてきた。
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 フォローするsono。
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 6P目、sono。日が西に傾きはじめ、急激に気温が下がってきた。ロープが凍り、繰り出しが難しくなってきた。順調にロープを伸ばすが、なんか上部岩壁までロープが足りない気がし、支点が取れるところでピッチを切ってもらう。(これが正解であった)
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 文三郎を行き来する登山者が望める。
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 1本だけペツルが出ている場所で確保するsono。
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 この頃から、sonoの異変に気が付く。ライブや仕事の疲れと寝不足も祟っているみたいだ。ペースが遅れ始め後続パーティが迫って来て、ちょっと下の岩を支点にピッチを切る。
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 7P目、ワタシ。途中で1本だけランナーを取り、50mいっぱい伸ばして終了点へ、やばかったー。ここで先行パーティに追い付く。終了点直前の数歩は傾斜があり、ここで滑れば80mは堕ちるゾ。新雪の下はブルーアイスなのかツァッケのかかりも悪くシビれた^^;。
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 sonoはかなり体調が悪いみたいで、数歩登っては息を整える。この頃から、冷たい風が当たりはじめる。どのみち上も詰まっているので、ゆっくり登ってきてもらう。後続パーティはロープが足らなくなり、コンテに切り替えた様子。
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 かなり高度を稼いできた。
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 8P目から先は全てトップを行かせて頂く、さんきゅ。上部岩壁の登攀開始。下部は支点が見当たらず、適当に岩でランナーを取る。上部は欲しいなーって場所にちょうどペツルが打ってあり心強い。上部チムニーはザックがひっかかってちょっと苦労。再び、先行パーティに追い付く。
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 8P目をフォローするsono。
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 9P目を登るが、先行パーティは支点がなかったようで岩でピッチを切っていた。クライムダウンし、こちらも岩角でピッチを切る。
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 ここで指の異変に気付く。さっきまで冷たさで痛かった指の感覚が薄れていたので暖めようと手袋をずらすと、薬指の存在感が全くない!親指で触ってびっくり、なぜか両手の薬指だけ表面がカチカチに凍り曲がらない、激汗。慌てて手袋の中で親指でさすり、指を屈伸するうちに溶けてきた。そして激しい痛みが。一方で、夕日に照らし出される横岳に感嘆したり。
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 八ヶ岳特有の冷い風が頬をもシビレされ、発音しづらくなってきた。かといって、プアな支点なのでザックを降ろして目出し帽を出すわけにもいかない。徐々に夜の訪れを感じるようになってくる。sonoも頑張る。
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 初めてのルートなので、あとどれくらいあるのか想像が付かずに、少し焦りが入り始める。10P目、出だしから支点が取れず、ランナウトしたままルンゼに入る。新雪の下は氷化しておりシビレるが、躊躇しているヒマはなく乗り越える。

 面倒なので、ロープいっぱい伸ばすが支点がない。頭くらいの大きさの岩で支点を作ろうとするが、ロープを岩に回したところでロープいっぱいとなってしまいエイトノットが結べない。ただ120のシュリンゲをかければよいだけであったのだが、極度の寒さで思考能力が落ち、ロープにインクノットをつくってビレイループにかけるという複雑なことをしてしまう^^;。フォローを確保する間も猛烈に冷たい風が容赦なく襲ってくる。

 11P目。傾斜も落ちてきたので、ノービレイでロープを伸ばすと、じきに稜線に出た!ロープをどんどん手繰り、sonoも頑張って登ってきた!17:15(+04:05)登攀終了。なんとか日没までに登り切ることができた。
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 後続パーティも心配ではあったが、会話の中で彼らは慣れてはいるようであったので、まずは自分たちの心配を。目出し帽をかぶる、うーん、天国^^。sonoを先に山頂に送り、ロープとギアをまとめる。最短の地蔵尾根か文三郎か悩んだが、真っ暗で吹雪いても降りられる自信がある文三郎を選択。
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 山頂小屋で、いちお証拠写真をパチリ。山頂まで来たので、後は慣れた道なのでとりあえず一安心。暖かい紅茶をすすると、落ち着きが取り戻せる。
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 乗鞍に沈む太陽、身震いするほど美しい。
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 17:35、赤岳山頂(2,899m)へようこそ!時折吹き荒れる烈風でバランスを崩さないよう、慎重に行動。それにしても、さぶい!1月、2月にも赤岳に来たことがあるが、そのどれよりもさぶいぞ!!
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 素晴らしい1日をありがとう。
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 権現の向こうに南アルプスが望める。
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 阿弥陀南稜、茅野の町並み、富士見パノラマも望める。しばし、素晴らしいショーに見とれてしまう。
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 そして、静かに夜の帳(とばり)が降り始めた。
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 文三郎尾根に入ると風も遮られ、毎度ながら「暖かい!」という不思議な感覚に襲われる。
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 美しい夕焼けショーは、引き続いて満点の星空ショーに変わっていく。この瞬間って好きだなー。神の存在を感じるよ。
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 18:45、満点の星空の下、行者小屋BCへ無事に帰着!いやぁ、素晴らしい1本であった!テントに入りお湯を沸かしながら、主稜登頂を祝って乾杯!念願であったルートを好天の下、自分達の力で登り切れてほんと嬉しかった。sono、ありがと。
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 2011年 3月 6日(日)
 
 風の音で目覚める。雪煙の速さから、稜線は冷たい風が吹き荒れていることだろう。昨日のうちに登って正解だったと思う。
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 目標は達成したし、sonoの体調も万全ではないようだったので、とりあえずのんびり朝食を摂ることに。折角なので、横岳西壁付近を散策することに。天気は良いが、風は強いなー。
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 横岳西壁。
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 三叉峰ルンゼの出合まで登り、石尊稜の取り付きを確認。
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 のんびりと周りの風景を楽しみながらBCへ戻り、お湯を沸かしてチャイを淹れる。気分はネパールの山中だ^^;。
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 時間もたっぷりあるし、折角担ぎ上げたビールを開ける。赤岳をバックに、なんたら贅沢。
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 景色をぼーって眺めながら、八ヶ岳を舞台とした色々な思い出を思い起こしてみたり。ゆったりランチをとり、ぼちぼちテントをたたむ。13:00、下山開始。
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 中央の頂きを詰める尾根が、赤岳主稜。さようなら、八ヶ岳。素敵な週末をありがと。きっと、また来るよ。
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 一気に下って15:00に八ヶ岳山荘の駐車場へ帰着し、下山連絡。もみの湯で汗と疲れを流し、冷えた指先もゆっくりマッサージ。どうやら指は大丈夫そうだ。八ヶ岳全体を覆う巨大な笠雲が。明日は天気は荒れそうだ。
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 赤岳主稜は、ずっと憧れの1本であった。誰かに連れて行ってもらうのではなく、自力で登りたいとトレーニングを重ねてきた結果なだけに、久しぶりに嬉しい1本となった。実戦で学ぶことも多く、また不意に美しい景色にも出会え、濃い週末となった。もろもろに、感謝。心強いパートナーに感謝^^。
by kanechins | 2011-03-06 20:18 | 「アルパイン」の独り言