北岳バットレス 撤退記

 9月10日(金)
 19時過ぎ。気象庁の天気図、HBCのアンサンブル予報図を再確認。やっぱ日曜日に寒冷前線通過の模様。sonoに「だめそー、Dは中止。どこの岩にいこ??」と。不貞腐れて呑んだ酒にやられ、そのまま寝てしまった。

 9月11日(土)
 午前5時に目覚める。慌てて最新の天気図を確認。ん!?太平洋高気圧の勢力が強いらしく、日曜日はまだ前線が長野北部に留まっている様子!?「いける!」と判断するや否や、sonoに電話。が、「電源が入っておりません」って、おいー。メールで「スグニ電話セヨ」と入れ、すぐさま出発の準備。会の下山本部に「やっぱ行きます」って登山届けをメール。

 そんなこんなで、午前10時前にsonoと合流。sonoは「Dは中止だから」と外泊し、朝にメールに気付いて慌てて帰宅して20分で出てきたらしい。


 2年ほど暖めてきた、北岳バットレス・下部フランケ~Dガリー奥壁の継続登攀。これを登るためにクライミングをやってきたといっても、決して過言ではない。この美しき大スラブを、誰かに案内されるのではなく自分たちの力で、それも青空の下で登るのが夢であった。

 技術的には恐らく余力はある。sonoとの調整も随分とうまくできてる。滝谷、甲斐駒で鍛えられ、体力的にも充実している。あとは天候だけだ。うちらは強力な晴れパワーを持っている。まさに、今がその「時」だ。


 芦安の駐車場に12時過ぎに到着。バスまで時間があると思っていたら、ちょうど乗り合いタクシーが出るという。100円高いだけで、荷物をヒザに抱えなくてもよいので、ちょっと待ってもらって出発!(片道1,200円、入山協力金100円含)

 1時間弱で、北岳の登山基地である広河原へ。途中、ココロの中で「うわ、峠から広河原までこんなにあるんだ」って思っていたら、sonoも同じことを考えていたらしい。そう、去年の思い出が鮮烈に蘇ってきた。
 「今回こそは、ここを歩きたくはないなー」「もしそうなったら、夜叉神にザックを置いてかねちん、車取りに行ってきて」、なんて冗談にも思えない話をする^^;。

 週末なのに、広河原は静か。もっとも、こんな時間に入山する人はいないか^^;。
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 今日は、今までの印象よりも、ずっと北岳が近く見える。「山が近くに見えるときは悪天の兆し」とは、観天望気の基本。いやいや、「余裕があるから近くに見えるに違いない」と思い直し、重い荷を背負う。とにかく、前線が来る前に下山しなければ。
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 足取りも軽く、2時間ほどで二俣。
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 さらに大樺沢を詰めていく。途中にザックを置いて、d沢の偵察へ。バットレス沢は確実にわかるので、あとは順に追っていくだけ。が、よくわからない。上部の看板まで行くと行き過ぎの様子。結局、b、c、d沢はすんごく近いことが判明した。d沢の取り付きにケルンを残す。

 写真中央がピラミッドフェース(第4尾根)。右が中央稜、左のスラブ帯が下部フランケだ。人が登っているのが見える。途中でビバークのようだ。
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 我々も適当な場所を探し、ビバーク体制に入る。すぐに出発できるようにギアを振り分けたり、ロープを背負えるようにしたり。残念ながら、大樺沢はdocomoは圏外。こんなときはやっぱり、AMラジオで気象通報がいいなー。

 鳳凰には夕方から、悪天を告げる大きなレンズ雲(笠雲)が掛かっていた。恐らく、台風が湿った空気を前線に送り込んでいるのだろう。明日は厳しいかな?で、飯を食べたら19時。やることもなく、早々に寝入った。

 sonoの特技は、どこでもすぐに寝れること。今回も、あっけなく先を越される。そうなると、出遅れた者の目が冴えるのは常。ビジターセンターで「二俣から上、熊出没注意」というのを思い出し、眠れぬ夜が始まった。仕方なく「余市」を流しこみ、頭の中でルートのイメージトレーニング。

 ザラザラ、ト・ト・ト。何かが歩く足音で目覚める。「まじですか?」、息を潜めるが、雰囲気的に熊ではない。と、甲高い鹿の鳴き声が間近で響く。バットレスに響き渡る声はすごい音量で、後で聞けはさすがのsonoも目覚めて「うっさいなー、もう」って思ったらしい。つえーわ^^;。


 9月12日(日)
 午前3時起床。習慣に則り、ワタシが湯沸し開始。星、ゼロ。分厚い雲が放射熱を遮っているのだろう、この時期の2,400mにしては、暑い。カンタンに食事を済ませる。いつもに加え、どんよりと湿気て重い空気がモチベーションを下げる。
 
 午前4時半すぎ、ヘッドランプをヘルメットに装着し、出発。
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 バットレス沢、c沢を越え、目印のケルンを発見。そこから忠実に沢を詰める。よく歩かれているのか、岩も安定していて、b沢よりもずっとわかりやすい。途中、ちょっとした滝に進路を阻まれる。最初に左岸に偵察に行くが困難。右岸のヤブ中に、明瞭な踏み跡があった。

 さらに詰めることしばしで、下部岩壁基部に到着、と思われる。ガスが深すぎてよくわからないのだ。
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 sonoと協議。(1)天候は良くて現状維持で、あとは悪化するのみ、(2)大スラブ帯での降雨は避けたい、(3)下部フランケに取り付いた時点から撤退は非常に面倒そう、(4)ガスで進路が見えない、(5)もし迷ったりで時間がかかりすぎた場合、また林道を歩かないといけない!?。加えて、私自身のなかに(6)憧れのDガリーは、青空の下で登りたい、というのがあった。

 sonoとの感度は似たようなもの。すぐに「撤退」の結論に。折角なので、下部岩壁の下見に。これがdガリー??
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 十字クラックは、結局よくわからなかった。このガスじゃ無理か^^;。
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 そうこうすると、1パーティがやってきた。これから4尾根を登るらしい。予報を聞くと、やはりあまり芳しくないとのこと。しばらくゆっくりと過ごし、改めて意を決して下山開始!

 下りは早い。あっという間に、二俣。巨大ボルダーが河原にあったので、触ってみる。近づくと、かなり大きい。マットがないとちょっとキビシそうだが、左側の壁はホールドもスタンスもあって面白そう!頂きには、古いリングが1本。考えることは、みな同じ!?sonoの巨大ソファーと化した大岩。
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 大岩からの景色は悪くない。
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 二俣の様子。どんどんと山頂から登山客が降りてくる。
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 まだ、ちっちゃな笠雲が掛かっているようだ。
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 二俣から広河原まで、1時間かからない。近いぞ、いいぞバットレス!これなら通ってもいいな^^。そして、なんと広河原に下山したら、バットレスが「あんさん、惜しかったね」と顔をのぞかせていた^^;。
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 結局。太平洋高気圧の勢力は、予想以上に強く寒冷前線を押しとどめていた様子。もっと自分たちの晴れパワーを信じればよかった!でも、これは結果論。大スラブで大雨に当たられた日には、大変なことになっていただろう。

 ギアを担いでの歩行は良いトレーニングになったし、これで下部岩壁の全容もわかってきた。バットレスはアプローチが短いこともわかったし、何より山の中にいることができたこと。結果的には撤退となったが、下界や岩場で「やっぱ行っておけばよかったー」って後悔するよりは、ずっとずっと充実した2日間となった。

 近くの温泉に行ったら、人工壁が。全くもう、ビョーキなんだから^^;。
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 ということで、今年の夏は終わった。
 引き続き目標が残っているので、それはそれで幸いかもしれない。今年の夏は、久し振りに山に多く入った。共に歩んでくれたみなさんに、本当に感謝してます!ありがとうございました^^!
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by kanechins | 2010-09-12 23:31 | 「アルパイン」の独り言 | Comments(0)


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