穂高・滝谷 day2(ドーム中央稜~AWR継続登攀)
2010年 08月 07日
午前4:10起床。空が白みがかる中で朝食を摂り、トイレを目指して北穂高岳(3,106m)へ。槍へ続く稜線が朝陽に照らし出される。
安全に登れますように。
「ブロッケンの妖怪」も手を振って見送ってくれた。
我が家のすぐ上に居を構えるカメラマン。極上のテラスで数日を過ごされるとのこと。
ガスの中、午前5:35出発。
稜線に上がり、涸沢岳方面に。二人とも初めてな上、ガスでドームが見えないので下降点がよくわからない。コル(鞍部)らしきところから下降開始。あちこちに踏み跡っぽいのがあって、右往左往する。
浮き石が多い急斜面の下降は、すごく気を使う。おまけに、自分らが降りている道が正しいのか解らない中での下降は、どきどきもの。リッジまで出ると、そこから先は絶壁。ガスが晴れ、どーんと笠ヶ岳が顔をのぞかせた。
はるか下方にテラスが見える。自分ならどこに下降支点を作るか考えながら、リッジ沿いに下降。すると、ペツル2本が打たれた立派な下降点に!
ここから20mの懸垂を経て、T2へ。
T2からT1を見上げる。って、T1はテラスっぽくないので解りづらい。
ロープを回収し、北側(下を見て右側)へトラバースし小尾根を登ると、「ドーム中央稜(3級Ⅴ-、5P190m)」の取り付きへ。午前7:05。2人とも初めてにしては、スムーズに降りてこれたと思う。
1P目はワタシという雰囲気が定着しつつあったため、遠慮なくトップを行かせて頂く(Ⅳ、45m)。
50m近いピッチで上部の様子もわからないため、プロテクションは間引き気味となる。
これで、まだ半分も登っていない^^;。下部はカンタンで、プロテクションも3つほど?
上部に入るとフェース&チムニーの境を登るように。登るほどに難しくなってくるが、要所要所に残置支点もあるため躊躇せず登れる。チョックストーン周辺はほぼ垂壁であったが、ボルトが打たれていたので突っ込める。
チョックストーンを越えるとちょっとしたテラス状。ボルトが2本打たれていたが、ビレイしづらそうであったので、そのままリッジを登る。やさしいリッジを詰めると、ビバークできるくらいの広いテラスが。ボルトはなかったので、キャメ2つと岩の3点で支点を構築。
ビレイ体勢に入ると、取り付きまで懸垂下降する4人が見える。写真は、チョックストーン上の小テラス。
2P目(V、20m)はsonoがトップ。カンテ沿いに登り、左上してスラブを登る様子。
2P目終了点付近のスラブから。花崗岩スラブを登っている人にとっては、これはスラブのうちには入らないと思う、笑。これでⅤ?1P目がⅣ?グレーティングってわからない^^;。バックはドーム上部。
2P目終了点付近をフォローするワタシ。この頃に、やっと高度感に慣れてきた。
3P目(I、40m)はワタシ。ドーム上部を目指し、リッジを越える。核心は屈曲したロープの重みであった^^;。
振り返ったところ。
4P目(Ⅳ、40m)は凹角からチムニーとあるが、よくわからない?トップのsonoに任せると、中央のクラック目指して登り始めた。
正規ルートは左側の様子であったが、ワタシもどちらか選べと言われたら右側を選びそう。グレード的にはこの中央クラックの方が上っぽい感じ。フォローすると、ほぼ垂直であった。終了点はこれまたビバークできるほどの広いテラス。
5P目(Ⅴ、40m)はワタシ。左上する凹角からハングを巻くピッチ。行ってきます!
ここを上がれば、ドームの頭。
終了点から見おろしたところ、40mもなさそう。最後のハング(というほどのものではない)はピトンがベタ打ち。A0で行けなくもなかったが、どうせならとフリーでハングを巻いた。終了点は腐ったピトンがベタ打ちされていたので、上がりきったところでカムで支点構築。
午前10:20に登攀終了。思ったよりもスムーズであったので、継続して北穂高岳・南峰・南西カンテにある「アートウォール(5.10a、3P70m)」へ継続することに。詳細は「岩と雪 167号」に。そう、我らが師範であるM山組長らが15年以上前に開拓したルート。恐らく、日本最高所にある5.10aと思われる。3,000mにある10aって、どんなんだ??写真左側にあるクラックの、左側フェースがルート。
まず、下降店がよくわからない。ガレガレのルンゼを下っては「違うなぁ」と。結局、南峰直下のコルを下り、岬状リッジの下部にあるピナクルに捨て縄をかけ、sonoから懸垂下降。取り付き、12:10。
今回も1P目はワタシに譲ってくれる。1P目(5.10a、25m)は、いきなりかぶり気味のところから始まる。ボルトはピカピカで、支点はすごく安心できる。下はすっぱり切れ落ちC沢が口を広げている。高度感満点ではあるが、支点が良いので慎重かつ大胆に登っていく。写真はフォローしてきたsono。
2P目(5.10a、20m)はsono。ルンゼ状からスラブへ。じきに姿が見えなくなった。
2P目終了点にて。
3P目(5.9、25m)はワタシ。傾斜も寝てきて、弱点を突いて登っていく。右側の岩峰が終了点と思って、ランナウトで突っ込んでしまった、汗。戻って左側上部のボルトで終了。
3P目を登ってくるsono。バックはドーム北壁。上部は縦走路からもよく見え、「リポビタンDのCMみたい」なんて声まで聞こえてくる^^;。13:45、登攀終了。
日本最高所にある10aを、ともにオンサイトを決められてヨカッタ^^。アルパインでありながら、しっかりとしたボルト。当時は新しい試みであったのかもしれない。色々な思いが詰まっていると思われるルート、しっかりと楽しませていただきました、組長!雷鳥クンが「お疲れ様」なんて言うワケはないけれど。(sono撮影)
こちらがドームでござい。
振り返ると、ドーム北壁がそびえていた。またいつの日か。
時間的には余裕があったが、登山届の関係もあり、これで休息に。南峰には巨岩テラスがあり、のーんびり過ごす。人も少なく、展望は抜群。不便極まりない、極上のリゾートである。
固く安定した岩質で、人気が高いのも肯けるドーム。
大キレットと槍。
高嶺の花。どちら様ですか?
時間もたっぷりあったので、C沢下降路や松濤岩周辺を偵察。こっちはまさに「岩の墓場」という呼び名がぴったり、がれがれ。
15時過ぎまでリゾート気分を味わい、再び北穂山頂へ。そこへおじさまが来て「登っているのを見たよー、がんばったねー!」と、一緒に写真を撮ってくれた。そして、小屋の生ビールで乾杯!すると、さっきのおじさまがお礼にと、貴重なスイーツをご馳走してくれた!?甘いものに飢えていた我々は、遠慮なくごちそうになりました^^。とても美味しかったです!甘いものは疲労が回復するなー。
我が家へ。週末だというのに、静かだ。
滝谷に沸き立つ積乱雲。
おのおの夕食を摂り、空が闇に包まれる前には寝袋に包まれる、ZZZ・・・。 (つづく)