北岳バットレス (4) そして帰還

 13:30、稜線に置いておいた荷物を回収して下山開始。ワタシとsonoで先に降りる、降りる。ものの15分ほどで八本歯のコルから下り始める。目を上げると、ほんの1時間ほど前までへばりついていたバットレスが眼前に広がる。中央の顕著な尾根が第4尾根。
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 さらに高度を下げ、14:40に二俣。大急ぎで荷物をまとめる。ロープ2本に湿ったテント、ギアなどが重く肩にのしかかる。14:55に再び下降開始。振り返ると、3人の姿がはっきり見えるところまで来ていた。いける。紅葉を強く照らし出していた太陽が、稜線に沈みかけていた。
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 荷が重たい上に、足回りはトレランシューズ。捻挫はゼッタイに許されないので、慎重に駆け下る。一歩、一歩が重い。sonoと「Yes,we can!!」「これ、なんの修行?」とか妙に盛り上がりながらも、ほぼノンストップで広河原が近づいてきた。そして、後ろからトレラン風の軽装なおいちゃんが走ってきた。

 「すんませんー、仲間が遅れていて、バスを止めないといけないので!」と。おー、うちらの仲間だ!と思うやいなや、なぜか走り出すsono。「ま、まじっすか??」。前にも経験があるが、人間、逃げる人を追いかけたくなるもの。ワタシもつられて走り出す。広河原山荘を過ぎる。吊り橋を渡る。そして、目の前にバスが!!

 15:58に、奇跡的に広河原へ到着!他にも遅れている人がいるらしく、またこのバスを逃すと帰る手段がなくなるということで、運転手さんや乗客の方々が待ってくださることに。その間、sonoが空身で走って荷物を受け取りに戻る。私は同情を受けるべく(?)、荷を背負ったまま、じっと待つ。

 16:10。16:15。16:20。一向に仲間が来る気配がない。バスの乗り継ぎの人もいるらしく、切符の販売員も「これが限界かなぁ」と。そして、バスは去っていった。みなさん、待ってくれて本当にありがとうございました。そして、静けさが訪れた。
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 そう。普段なら芦安方面へ向かうタクシーや登山客で、まだまだごったかえす時間。しかし、今回は夜叉神峠方面は通行止めがまだ解除されていないため、タクシーも登山客もゼロなのである。

 残された手段。アルペンプラザで身延方面のタクシー会社を教えてもらう。しかし、なんとここは携帯が通じないばかりか、普通の公衆電話もない!?そして、あるのは衛星公衆電話。ちなみに、50秒100円!!用件を手短にまとめて連絡。

 「はいはーい!」「タクシーを広河原からお願いしたいんですけど」「もしもーし??」「聞こえますか?」「もしもーし、あれ?」。そう、衛星電話というのは、通話にタイムラグが生じることを後になって思い出した。しばし、全く会話にならない。

 そうこうしていると、おばちゃんが「あ、お客さんがきたで、ちょっと待ってね」って、「おーい!!」。ちゃりん、ちゃりんと100円硬貨が落ちている。で、結局。「ワタシじゃわからんで、ドライバーの携帯にかけてや」と番号を教えてもらう。そいでかけてみると「もう、ゲートに間にあわないからムリ!」って、おいおい、笑。

 結局、2社あるタクシー両方に断られた。「ってことは、帰れない??」。とにかく、山岳会の留守番本部と家に連絡。これらの通話で、1,000円近くかかってしまった、汗。

 それにしても、後発部隊が降りてこない。だんだんと辺りが暗くなってきた。「コケて骨を折った!?」「誰か過労で倒れた!?」「まさか、熊に襲われてるのでは!?」。イロイロな憶測が生まれ、リーダーとしては急に不安に。ほいで、慌ててヘッドランプも持たずに再び登山道を駆け上がった。途中で「あれ?おれ、やばくね??」と思ったが、登ればみんなに会えるだろうと、とにかく登る。

 そして、無事に遭遇!まぁ、こうとなったら慌てても仕方がない。ゆっくり落ち着いて下山。そして、広河原に17:40頃に到着。どうするか。もちろん、われらはしがないサラリーマン。明日は出勤しなければならない。ということで、奈良田まで歩くことに。ゲートを越えて、車を停めてある場所まで、距離にして20km弱。。。正直、広河原までかなりムリしたので「まじか!?」とは思ったものの、ワタシも帰れないと困るのだ。

 意を決し、真っ暗な中でヘッドランプを再び装着し、18:00に歩き始める。
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 とにかく、歩く。アスファルト道は容赦なく足裏の皮や節々にダメージを残していく。荷も重く肩にくいこんでいく。それでも、歩き始めてしばらくすると、体が慣れてきた!?幸いであったのは、ずっと軽い下り道であったことだ。

 じきに深山を走る林道が、中秋の名月に照らされ始めた。月明かりはまぶしいくらいで、奥深き山肌を照らし出す。美しい。「♪ 月がとっても青いかぁら~」なんて唄があったなぁ、ほんとに青いなぁ、なんて思いながら、歩く、歩く。

 写真は、22:15に撮影。道程の半分は過ぎているが、みんなアルパインで1,000m登って、1,700mを下った後。疲れはとうにピークを越え、もはやほんとに修行の域にまで達していた!?
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 休憩も、何度取ったかわからない。徐々に笑いは絶え、無口になっていく。ただ、黙々と「月夜の夜道」を前へ、前へと進むのみ。何も考えないくらいの方が、ラクなこともある。最後の方は、かえって休むと辛いので、一気に4kmほど歩きとおした。そして、いよいよゲートへ!!!

 「って、ゲートが通れないや~ん!!」、プラザの人の話だと「バーがあるだけだから、人は通れるよー」って。そこには、鉄格子のような頑丈なゲートが。高さも3m以上あるし、「ねずみ返し」みたいな部分もある。sonoと「どーする?空身で上がって、ロープとギアで荷を上げるか?」って真剣に話はじめる。

 と。あれ?人が通れるような小さなゲートは、ただ針金で止まっているだけであった、汗。そして、23:10に無事にゲート通過!!
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 後発部隊はまだかかりそうだったので、荷物をそこにおいて、空身で車の回収へ向かう。ここからさらに2kmちょっと、30分くらい歩いた。が、荷がないのでまだマシであったかな。そして、車を回収してゲートまで戻ると、午前0時を回ってしまった。本日の行動時間は、ほぼ休憩なしの約20時間。。。

 荷物を積み込み、いざ長野へ向けて出発!noriが運転を引き受けてくれ、結局、最後まで任せてしまった。疲れているのに、ありがとー!そして、午前3時過ぎに帰宅。あまりに荷物が重かったで、そのまま体重計に乗ったら荷物は25kg弱あった、汗。とにかく、シャワーを浴びてカンタンに荷物を整理し、午前4時過ぎに布団に入る。

 そして、午前7時前に起床。何も無かったかのように出勤。また、普通の生活が始まった。よかった、よかった!?午前2時半に起きて、寝たのは翌日の午前4時過ぎ。26時間近く、戦いました^^;。

 ご一緒させていただいた皆さん(実は北海道メンバーだったりもする)、今回も滅多にできない素晴らしい山行をありがとうございました!今、振り返ってみると、これはこれで楽しかったです^^。さぁ、次はどこの山へ!?
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by kanechins | 2009-10-04 23:56 | 「アルパイン」の独り言 | Comments(2)
Commented by at 2009-10-17 04:07 x
うあ!!
後半がすごかったんですね!!
いやーー、皆さま、お疲れさまでした!!
Commented by kanechins at 2009-10-21 00:13
☆け さま
 コメント、ありがとうございます!!うれしいっす。
 ほんと、バットレスはほんの前哨戦って感じでした^^;。
 それでも、以前は連れて行かれるがままって感じでしたけど、今回は自力で登れた感が強くて、それがまたよかったりします^^。みなさまのおかげです。

 ほんと、メンバーのみなさん、おつかれさまでした!!


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