OMM(Original Mountain Marathon)は、1968年に英国で生まれた山岳マラソンレース。敢えて気候条件の厳しい初冬に、必要な装備を背負い、読図、計画、判断、走破力、タイムマネジメント、チームワークなど「山の総合力」が試される1泊2日の山岳ロゲイニングレース。日本版であるOMM JAPANの記念すべき10回目の開催で、自身の参加は6回目となる。
種目は「ストレート」(指定されたコントロールを順番に踏破するタイムトライアル)と、「スコア」(制限時間内に踏破したポイントで競う)の2つ。今年も、山岳指導員仲間でもあるJunkoをバディに、「スコア(ロング)」(制限時間 13時間)にエントリー。備忘のために記録を残したい。
2023年11月10日(金)
午後の年休を死守し、帰宅して準備を整え出発。意気揚々とした気持ちとは裏腹に、小海町に近づくとかなりの降雨に見舞われ、路面はびちゃびちゃで意気消沈。雨で視界が悪い夜道を、ナビを頼りに小海リエックスへ。真っ暗でわかりにくい駐車場を彷徨い、18:30頃に駐車。
小雨が舞う中、前夜祭の会場へ向かう。てっきり、上の写真のホテルが会場かと思っていたが、ホテルの脇を抜けて、暗い夜道を10分程歩く。スキー場のレストランっぽい「エーデルワイス」という建物へ。
会場内は既に多くの人で賑わい、熱気に溢れていた。
暖炉を「暖かい」と感じたので、外はそれなりに冷え込んでいたと思う。
会場には、過去の大会のパネル展示があり、思わず魅入ってしまう。
楽しみにしていたクラフトビールは、な、なんと既に売り切れ!?会場の雰囲気で気持ちを盛り上げるだけ盛り上げ、車に戻って持参の白ワインで独り、健闘を祈って乾杯。22:00には寝袋に入る。
2023年11月11日(土)
隣の車の音で目覚める。昨日の雨により湿度MAXで、霧に覆われた朝となった。
お湯を沸かしてインスタントラーメン&おにぎりの朝食を。Junkoと連絡を取り、無事に合流。なんと、隣の車はK竹夫妻!装備チェック、荷物の分配を行い、再び会場へ。
受付で宣誓書を提出し、今年も験(げん)を担いでSIチップはJunkoの腕に装着。
行ってきます!
歩いて10分弱のスタート地点へ向かう。毎年の事ながら、この看板を見ると、気が引き締まる。
初日は早めのスタートであったので、人もまばら。スコア競技は、1分間毎に4チーム(8人)のウェーブスタート。スタートラインの向こうに人だかりが!?いきなり悩むようなルート設定なのかと、びびる。
地図を渡され、まずは現在位置(紫色の三角マーク)を確認。全体を見渡し、前半を確実に押さえて後半を流すか、前半はさらっと流して後半で可能な限り稼ぐか。地図を渡されてからスタートまでの1分間は、あっという間。スタートして歩きながら、後半でポイントを稼ぐ方針に。
標高差で100m下るCE(10)、CC(40)をスルーし、まずはAC(20)を目指す。
実線の道だからと余裕をかましていたが、途中は小径が交錯し、彷徨っているチーム多数。
無事にAC(20)をGET。幸先が良い。
林道のショートカット。荒れていたり、傾斜が強すぎたりすることもあり、必ずしもラクで早いとは限らない。見極めが肝心。
コンパスと地形を頼りに、狙った尾根を下る。方針を決めたら、思い切って突っ込むことも肝要。
CDは50ポイントなので苦戦を強いられるのを覚悟していたが、すんなりGETできた。
緩やかであっても、登りが続く直線路は地味に辛い。
続くDC(30)も、道路からの小径を見落とさないようにしてGET。
続くCGへは山側から行くルートも取れそうではあったが、かなりの大回りに。一旦、道路まで下る。ロードが苦手なワタシは、この手の道が辛い。。。
CG(30)は広い尾根に位置していたが、スムーズにGET。
さらに上に登り、淡い踏み跡の道へ。笹を掻き分け、地形を読みながらDD(10)を目指す。
DD(10)を目指す。踏み跡がない尾根は、不安が残る。
しかし、読図を信じて藪を進み、DD(10)をGET。尾根のわずか手前から上がってきたチームは見落としたまま下って行った。非情だが、これもレース。
CB(50)もスムーズにGETし、広い尾根を下る。
このまま尾根を下ると、割と大回りに。ここまで順調に来れたので、ちょっと攻めてショートカットすることに。灌木ブッシュを掻き分けて道路が見えた!かなり前に走って追い抜いて行ったパーティが見えて「やったぜ!」。と思ったのは束の間。なんと、傾斜の強い法面の上に出てしまい、降りられない。
尾根から下ってきて(写真上から)右に行くか、左に行くか。地形図を見ると右(写真だと左)に行くと切れている部分があったので、右へ。が、トゲトゲの蔦が交錯する藪で、痛いわ、引っ掛かるわで大苦戦。
行けども行けども崖が切れない。なんとか、蔦を掴んで後ろ向きに降りられる高さの場所で、強引に道路に降りる。ここで20分程ロスト、汗。今思えば、左に行けば尾根は低くなっていくので、このようなケースは尾根末端を目指すべきであったと反省。
道路を横断して、再び藪の斜面を下る。が、途中の見えない段差でJunkoが足首を強くひねってうずくまってしまった。しばし休憩して様子を見る。走れないけれど(走らないけど)、「固定しなくてもなんとか歩けそう」と。
ペースは落ちるものの、読図にじっくり時間を割くことができ、BH(40)を迷うことなくGET。地味に辛い林道を登ると、急に展望が開けた。
だんだんと人が増えてきたので、ゴールが近づいていることを感じる。BU(30)をGET。
マーシャルポイントを目指して、再び藪を下って林道へ。
林道から小径に入る部分がちょっとわかりづらく、前を行くパーティは気付かずに進んでいった。
DM(50)、CM(20)も順調にGET。さらに尾根を下って道路に出る。
さぁ、ここから登り返しだ。次のBBは谷にあるので「下から沢を詰める」ことも考えたが、ここは林道から攻めることに。広い谷は地形を読みづらく、周囲には彷徨う人々が。我々は地形を読みとることができ、BB(40)も順当にGET。
再び林道まで戻り、長い登り坂を黙々と進む。途中、道路が膨らむ場所から沢を目指して藪に入り、BA(30)もGET。
再び林道まで戻り、あとはゴールを目指すのみ。
与えられた地形図には標高も、地名も記載がないので、自分がどこにいるのかわからない。が、どうもキャンプ場っぽいところがゴールのようだ(後に「駒出池キャンプ場」と判明)。DE(10)もGET。
トイレ群が見えてきた。ゴールは近い!
既に色とりどりのテントが立ち並ぶキャンプサイトを抜け、フィニッシュへ!
お疲れさまでした!
SIチップのデータを読み込み、コントロールに間違いが無いか確認。
結果、初日は6時間37分で13コントロール、410点をGETできた。残り23分で取れそうなポイントは無いので、割と狙いどおりに回れたと思う。
キャンプサイトに入ると、スマホの使用が可能となる。まだ、タカコ&まやまやからLINEが入っていないので、フィニッシュしていないようだ。3つテントを張れる場所を探す。
場所を確保し、テントを設営。水汲みなどしている内に、タカコらが合流してテントを設営。それにしても、寒い。上下ともダウン、合羽を着て、さらに下半身を寝袋に。今宵は、鶏の白湯鍋とアルファ米。冷えた体が暖まる。
しばし、外で談笑。が、あまりに寒くてそれぞれのテントへ。濡れた岩は氷っていたので、外は氷点下。体力に自信がなかったのでフライシートを割愛したが、夜半にみぞれが降った時は焦った。エアマットも省略したので、底からの冷えに耐える辛い夜に。
2023年11月12日(日)
周囲の音で、午前5時半過ぎに目覚める。出発が早いチームは、既にテントの撤収を始めていた。
お湯を沸かし、体を芯から温める。
程なくして、タカコ&まやまやがスタートを切っていたので、エールを送る!がんば!!
テントを撤収しながら、続々と出発する選手らを見送る。
今年はトイレの数が十分で待ち時間も無く、本当にありがたい。
そして、指定の時間にスタートエリアに入る。
そして、2日目がスタート。
地図を頂き、作戦会議。
全体のコントロールの配置を確認し、最初に標高を上げる西側を攻めてポイントを稼ぎ、最後に下る作戦に。そうと決まれば、まずは標高差で300mほど、淡々と遊歩道を登る。
ロードを経て、写真上部の植生が変わる角を目指して登る。
本日最初のDK(50)をスムーズにGET。
来た道を下るチームが多いなか、我々は藪に突っ込みBFを目指す。
林道に出る。この時は気が付かなかったが、後で地図を見返したら、昨日通った道であった。
BFを目指して右の藪に入るが、これが猛烈!久しぶりの、背丈越えの藪をわっせわっせ漕ぎながら尾根を詰める。
BF(20)をなんとかGETした後、再び猛烈な藪斜面に入り、転げ落ちるように下る。続いてのCAを左の道から行くか、右から上がるか悩む。最初にADを目指すことを考え林道を下るが、沢筋は藪が濃い。下からCAを目指して登り返すことに。
が、CAが見つからない。周囲には彷徨うチームがうようよ。冷静に読図を行い、「この辺りのはずなんだけどなぁ~」と深い藪を掻き分けたところにコントロールを発見!10点なのに、今回、1番難しかったかも?
一旦、林道まで戻る。そして、コンパス片手に小径を辿り、AD(40)もGET。林道まで下り、一旦、ロードに出る。昨日、ここを歩いたのだが、こんな急な坂だったのね。
突き当りのスキー場の、左側の尾根を詰める。地図通り、登るほどに傾斜が増してくる。
写真上部の急斜面を右に巻き、尾根へ。ゲレンデから登ってくるチームは、急傾斜に苦戦している様子。CJ(30)をGETし、さらに等高線が密となる上部へ。気を許すと滑落しかねない急斜面を、慎重に登る。
150m程高度を稼ぐと、今度は笹っ原に。足元が見えづらいので慎重に。
そして、再びロードへ。マーシャルポイントで声援を頂き、脇の細い林道へ。途中、ショートカットを交えてAKを目指す。
尾根上にあるAK(30)をGET。
再び林道に戻り、本日、最も難易度が高そうなBM(50)を狙って草原に入る。コンパスをこまめに確認しながら踏み跡を辿り、傾斜が落ちる部分からはコンパスのみを頼りに方角を定め、笹で覆われた斜面を下る。
途中、急斜面で朽ち木が折れて、頭から窪みに吹っ飛んだが、受け身を取れて事なきを得た。10cmずれていたら、顔面から切り株に突っ込むところであった。以降、慎重に脚を運ぶように気を付ける。
脇の笹が薄い部分を選びながら、方角を見失しなわないよう下る。
彷徨うことを覚悟するような広い尾根であったので、ピンポイントで斜面下部の道に出たときにはびっくりした。そして、貴重なBM(50)もGET。
一旦、ロードに出る。スキー場トップのBDをどう獲るか悩んだ末、「尾根の西側は藪が薄いはず」というJunkoの意見を考慮し、沢から尾根に上がることに。
狙い通り藪は薄かったものの、なかなかの傾斜。わずか60m程の登りが異様にキツい。尾根を登り詰めて笹原を越え、ゲレンデトップのBD(10)をGET。
ゲレンデを下り、並走する遊歩道に移る。
遊歩道上にあるDU(20)もGETし、再びゲレンデへ。滑ればあっという間の斜面を、てくてくと下る。奥に、11月に歩いた荒船山が望める。
ここで、このまま下らせてくれないのがOMM。40点を手に入れるため、再び、ゲレンデの急斜面を登り返す。
普段ならなんでもない斜面なのだが、疲労が重なった心身にはこたえる。
ゲレンデを登り切り、斜面を緩やかに下りながらCN(40)を目指す。
さぁ、いよいよラストだ。フィニッシュゲートが見えてきた。
足首を痛めたJunkoに歩調を合わせ、慎重に急斜面を下る。
そして、フィニッシュ!2日間、本当にお疲れさまでした!
SIチップを返却し、ポイントの確認。2日目は5時間31分で10コントロール、300点をGETすることができた。
スタッフとして参加されていたO西先生、ことちゃんと再開!今回も、素敵な大会運営をありがとうございました!!
手打ち蕎麦を頂けるとのことで、列に並ぶ。
大変においしゅう頂きました!
会場を盛り上げてくださっていたDJの方にも拍手!
足首を傷めながらも、トゲトゲの藪でパンツがびりびりに裂けてまで歩みを共にしてくださった相棒にも、感謝の念を込めて拍手を送りたい。
さて、結果。総合得点は710点(12時間8分)。順位は混合10位/76チーム、総合49位/306チームとなった。
day1は沿面距離27.3km 累積登高差1,961m、累積下降△2,048m。
day2は沿面距離19.6km 累積登高差1,622m、累積下降△1,531mに。合計沿面距離46.9km 累積登高差3,583m、累積下降△3,579mとなった。
表彰式まで残ってみたが、驚いたのは親子2世代で入賞しているチームが散見されたこと!父親も相応の走力がないと入賞できないはずなので、家族揃ってのランナーなのだろうね!
今年もOMMが終わった。正直、心身共に衰える一方なので「今年で引退だな、これは」と思っていた。が、ペースに余裕があったのか、読図に集中することができ、ほとんどロスすることなく完走することができ、とっても楽しかった。
来年のことを言うと鬼が笑うが、OMMへのエントリーを止めてしまうと山に行かなくなるおそれが大きいので、なんとなーく来年もエントリーしているような気もしてきた。
今年も共に歩んでくれたJunko、共に北八ヶ岳の山中を彷徨い歩いた選手の皆様、何より大会を運営くださったスタッフの皆様に、心から感謝を申し上げます!今年も素晴らしい大会をありがとう~!!